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極私的プロレス観戦論

ライガー30年目のベルト挑戦

新日本プロレスの若手の1人がイギリス遠征中に行方不明になって今年で30年経った。捜索願いは出されておらず未だに失踪中だ。

この時以降、失踪したリバプールビートルズよりも赤いロングタイツで坊主頭のヤングライオンが風になった場所としてファンの記憶に刻まれることとなる。

入れ替わるように謎の覆面レスラー獣神ライガーが全身タイツという今でも暑そうで他のレスラーは絶対真似したくないモジモジ君スタイルで東京ドームに「燃やせ燃やせ」というイントロにのって登場して今年で30年目を迎えた。

 

1989年4月24日。平成元年。元号が変わってまだ3か月。

新日本プロレス初のドーム興行でソ連のレスラーが参戦し猪木が異種格闘技戦で初めて負けた日でもある。

 

 

 ライガーライガーたらしめているのはあの全身スーツコスチュームによるところが大きい。肉体美が商売道具のレスラーがあえて隠す。さらに脱げば脱いだで筋骨隆々なのだがめったに脱ぐことはない。つかまれたら不利になりそうなツノ。今では見慣れたがカタツムリみたいにツノが出ているマスクなんて誰もしていなかった。

逆に対戦相手がやりにくそうでファンはブッチャーの凶器シューズレベルで見ていたことが懐かしい。

タイガーマスクウルトラマンほど知名度がなかったのがよかったのだろう。

あの頃も今もマンガのライガーライガーから知った人の方が多いのではないか。

 

 

新日本プロレスは今年で47年目だからその3分の2の時間をライガーはセルリアンブルーのマットの上で過ごしたことになる。

中身が彼であれば54歳。身体つきも丸くなりスピードも落ちて全盛期のコンディションを望むべくもないのは誰の目にも明らかだ。

 

何の因果だろうか。平成元年にデビューしたライガーが平成最後の年に旗揚げ記念日で石森のベルトに挑む。これを会社から新日ファン、ライガーファンへの夢のプレゼントとして受け取りたい。(ここでいうファンには石森も含まれる。)

ベルト奪取に失敗すればライガーがこういった舞台に立つのは最後になるのではないだろうか。ベルトを巻いて少し夢の続きを見たいがどうだろう?

 

ヤングライオンからずっと新日一筋のレスラーはそれほど多くない。

 ましてやキャリア30年を超えるジュニアヘビー戦士となるとライガーしか残っていない。ヤングライオンからのたたき上げのジュニアのレスラーは船木  金本 サムライ  保永  ヒロ斉藤  佐野  野上  高岩  カシン  大谷  と名前はあがるが誰も新日にはいない。

さらに藤原喜明とスパーリングをしていた生え抜きレスラーとなると新日内を見渡しても現役ではライガーが最後のレスラーだ。

 

強さの象徴   橋本がやめた。

高田が最強を謳った。

猪木が総合格闘技と組んで小川と佐山とともになぜか攻めてきた。

船木と鈴木が秒殺で席巻した。

桜庭が強さのニューアイコンになった。

新日をやめていったレスラーのほうが残ったレスラーより圧倒的に強かった。

新日のレスラーも総合でズタズタにされた。

同時に 新日本プロレスファンの心もズタズタにされた。

それでも新日を見続けたのはライガーがいたからだ。

その理由はライガーひとりがファンの期待する新日の強さを担保してくれたからだ。

あの頃ライガーがファンの流出をひとりで食い止めていた印象だ。

ライガーがやめていたら新日本は消滅していたのではないか。

まさにミスター新日本プロレスの称号がふさわしい。

 

そんなライガーが現役バリバリの石森と闘う。

石森もライガーと闘いたいんだなと思った。

TAKAもKUSH IDAもライガーとの一戦は特別だったようだから

石森は今、嬉しくて仕方ないはずだ。実際嬉しそうだったし。

ジュニアのレスラーにとってライガーはプロレス界のカズでありイチローなんだろう。

スーパージュニアを卒業した今、ライガーとシングル戦、それもリスクをかけてのシングル戦となると実現の可能性はゼロだ。

エキシビションマッチに近い形式ならいくらでも可能性はあるがそれではマスターズレベルと相違なくなる。

それを避けるためには今回のように石森が逆指名するしか実現方法はない。

千載一遇のチャンスを石森は掴んだわけで他団体含めたジュニア戦士からは羨望のまなざしを送られていることだろう。

みんなの憧れのライガーを挑戦者にするとはなかなか石森もプロレスファンのツボをついてくる。

 

「お前、後悔するぞ。あんまり大人をからかうもんじゃない。坊主、お前が逆指名するなら、俺はいつでもどこでもそのベルト、もらいに行くよ」

会社が本気でベルトを取ることを許すのならば、ライガーが本当にベルトをもらいにいくならば、タイトル戦では宮本武蔵の心の師であった柳生石舟斎のような「枯れたテクニックと間合いと凄み」のあるファイトを期待しよう。

ライガーが隠した場所を忘れていなければ、藤原直伝のナイフを出すのか?ちらっと見せるのか?それとも使うのか。そこにも期待しよう。