前田日明の舌鋒は衰えず
昨日のマスターズのバックステージでの前田のコメント。
いまのプロレスについて示唆に富んでいることを言っている。
「マスターズの試合は派手なロープワークも変わったリバース(返し)もない。それでも、長年やっている試合の経験と間でやっている。そういうキャリアの人たちの試合を見て、若い選手も考えてほしい」
「プロレスは今のようにルチャっぽくなってると、一発怪我やっちゃうと大きいんでね。
厳しい試合、激しい試合、怖い試合、キツい試合=アクロバティックでは無いんですよね。
プロレスに対して、“決めごとで”っていう定義も浸透しちゃいましたけど、それを分かってても『ひょっとしたらプロレスはリングの上でホントにやり合ってんじゃないか』って思わせるようなものをね。
前田日明自身が成功したのは何かって言うと、業界の人達まで騙したんですよね。
猪木さんもそれが出来たし、自分もそういう猪木さんを見習って、業界の人間、一緒にやってる人たちも騙すのは最高なんだなって、やってました。
若い人もそこまでやってね、
何が現実で何がウソなのか、何が作り込みなのか
って分かんないように、やってる内にやってる本人も分かんなくなってくんですよ。
そこまでやったら印象に残るすごいレスラーとして名前が残るでしょうね。
そのへんの部分がゴソッと抜けちゃってるんで、
プロレスはどんどんダメになって行きますね。
やってる本人さえも分かんなくなるようなアングルが組めたら最高ですね。」
年寄りの小言として受け流してもいいのだが、奇しくもこれと同様のことを文脈は違えど棚橋がケニーに、ジェイ・ホワイトが一夜会見でも言及しているので前田のこのコメントを看過することはできない。
前田の言っていることを体現できる最も近いところにいるのはジェイだろう。
品のないプロレス
ばかばかしいプロレス
ルチャっぽいプロレス
これと対極のプロレスをいまジェイがみせようとしている。
前田の言っていることは、いまのプロレスの弱点をあぶり出している。
だからRIZINはそこを突いてきたのだ。
高田と榊原のほうが猪木の手法をよく真似している。
アングルと言えば大成功したのが内藤だ。前田の言う通り名前を残すレスラーになった。あの時内藤の言動がリアルさを持っていたから内藤を今の地位まで押し上げた。
そして次の大きな期待を抱かせるアングルを担うのはジェイになりそうだ。
還暦になりすっかり太った前田だが実際の技よりも
強力な武器だった舌鋒は今も健在だ。