ライオンの血
昨日のロッポンギ対ロスインゴの試合は前半異様な空気になった。
ヒロムが小松の胸へ執拗な張り手。
血がにじむまで打ち込む。
驚いたのはBUSHIのフェイスロック。口がきれて血が出ていた。
今の新日マットで血が流れることは
タブーになっているにも関わらずここまで攻めたBUSHI。
前半は技らしい技は出ず、観客も静まりかえっていた。
どうみても若手2人が先輩2人にいいようにされていた試合。
前回のドラゴンリー達との技の掛け合いの魅せる試合とは違っていた。
観客が引くような展開だった。
新日マットの後楽園大会は、まれに観客不在のシュートな試合が顔を出す。観戦した中で思い出すのは昔夢勝ちでライガーのあびせ蹴りが若手の三沢の眉間に当たった。三沢はそのまま動けずそれがもとで引退。いまは新日のトレーナーになっている。プロレスがギリギリの状態で成り立っていることを目の当たりにした。また前田の長州顔面キック事件も後楽園を異様な空気に包んだ。あのとき南側で観戦していたのだが見てはいけないものを見てしまい戸惑う観客の雰囲気は今でも思い出す。
そんな系譜に連なるような試合が昨日のタッグ戦だった。
それも外様のBUSHIが仕掛けた。
ライオンの血。生え抜き。
BUSHIが過敏に反応した。
この言葉がプロレス内プロレスの予定調和を壊すきっかけだったのか?
小松田中のキャラ、会社の書いたサクセスストーリーにはまったく共感できない。しかし、生え抜き発言には彼らの本音が見える。この言葉には、新日ブロの矜持が伝わる。
唯一2人の生々しさが伝わる。
かつての新日ブロのこだわりを思い出させてくれる。新日にこだわり生え抜きにこだわるレスラーは彼ら以外には内藤しか知らない。内藤の影響を受けている2人ならさもありなんだろう。
試合は、後半いつも通りになり案の定ロッポンギ勝利で終わった。既定路線だろう。
BUSHIとヒロムが先輩としての厳しさを教えたか。それとも生え抜きに反発して追い込んだのか。それは、
彼らレスラー同士でしかわからないだろう。ただロッポンギの2人が泣きそうになりながら必死に向かっていった姿は、プロレス者の心にはきちんと届いた。
ライオンの血。生え抜き。
僕としては、久しぶりに聞いたとんがった言葉だった。
田中がずっとここにこだわりを持ち続けたら、オカダの前に立つのは彼だろう。
ライオンの血が流れている者と流れていない者。
このイデオロギー対決は、見る者を熱くさせる。
田中小松の尖った危険な思想。
それを中和するためのロッポンギとロッキーのギミックならしばらく2人に付き合うことにしよう。
いつか二頭のライオンがサーカスの調教師を食い殺し檻の外に出てくる
日を待とう。
ライオンの血。かつての新日ファンはみんなライオンの血が流れていたことを思い出させてくれた昨日のタッグ戦だった。