marico world order

極私的プロレス観戦論

巨鯨 バンディ

キングコング バンディの訃報が届いた。

ニックネームは巨鯨。

巨鯨   狂虎  荒馬   金狼  猛牛(アレンの方ね)  巨象  狂犬等々

動物を冠したニックネームは数あれど珍しい海洋生物である。

好きなニックネームのひとつだ。

その佇まいの雰囲気は抜群だった。

 しかし

なぜかリングネームはキングコング

キングコングは都会か密林だから鯨とは住む世界が違う。

まだブーン  ブーンの方がよかったかもしれない。

キングコングと言えばブローディだったからリングネームになぜそれをつけて新日マットに上げたのか疑問だ。

丸坊主で肌が白くてまん丸だったバンディ。

キングコングとは似ても似つかない風貌だった。

ポスト ハンセン  ホーガンの外国人レスラーのひとり。

猪木とのボディスラムマッチが有名だ。

ハンセンやブローディレベルのインパクトを期待したがエース級にはなれなかった。

そんなレスラーがこの時期は来日しては消えた。

 

時代がバンディを必要としなかった。

バンディがあと10年早く日本マットに上がっていれば人気を博したことだろう。

もうブッチャーやマクガイヤー兄弟のようなアンコ型の動かないレスラーは時代遅れになっていた。

時代は怪物、神秘性、見世物小屋のいかがわしさよりも リアルな格闘技志向に変わりつつあった。

悲しいかなバンディもビガロ同様観客の嘲笑の対象にしかなりえなかった。

古舘が率先してマシュマロマンと呼びバンディの凄みを削りとり茶化すことがゆるされていた。

(この頃あたりから古舘のフレーズは悪ふざけが過ぎてかつてのようなプロレスへの畏敬は感じられない。)

以前ならその巨体が説得力を持ったのだが逆に緊張感のなさをリングで体現することとなる。

モンスターファクトリーも未だ見ぬ強豪も観客にはネタバレの手品だった。

見え透いたギミックはもう通用しなくなっていた。

この後、恐竜パワー時代だと週刊ファイトがいくら煽ってもバンディのようなレスラーが主役になることはなくなった。

それは猪木が自分より大きな外国人レスラーの技を正面から受けて相手を光らせるほどの体力がなくなったことも意味していた。

 

日本マットは鯨を自由に泳がせるほどの大きな海ではなくなっていく。

日本人対決  格闘技路線  ケーフェイ風潮   レスラーの小型化。

遊び心   寛容さをどんどん失っていく。

キングコング バンディは日本のプロレスがまだファンタジーだった時代の掉尾を飾る怪物レスラーだった。

 

日本では巨鯨からヒヨコに貶められてしまった バンディだがアメリカに帰り海神と太平洋の覇権を争う。WWFの水が合い、水を得た巨鯨は一時代を築くことになる。