皇帝戦士墜つ
強い 凄い 危険 重い デカい レスラーはたくさんいた。
そこにヤバいというなんだかわからないオーラを出しているレスラーはそう多くない。作家の村松友視氏はそれを凄玉と表現した。
アンドレ ボック ハンセン ブロディ 初期のブッチャー シン
ジュニアだがダイナマイト キッド
ノートン ウィリアムス ビガロ ホーム は凄玉ではない。
ましてやエルガンなんてとても足元に及ばない。
本当に危ないと思わせる薄暗いオーラ。
ファンが恐れて近づけない。
すべてを兼ね備えていたとなると全盛期の
ハンセン アンドレ ブロディ そしてベイダーだろう。
そして凄玉と言っていいレスラーの最後がベイダーだ。
ドームのハンセン ベイダー
ビガロと組んで北尾を壊した試合はベイダーの株を一気に上げた。
デビューがデビューだけに始めは会社に優遇されたとんだいっぱい食わせ者イロモノレスラーと思っていたのだが本当に強いのであっという間にトップに立ってファンに認知されてしまった。ベイダーはそれまでポストハンセンで来日したでかいだけのレスラー達とはモノが違った。
そのベイダーもライバル不在だった。
衰えてしまった猪木ではもう相手にできない。
藤波は小さくて壊してしまった。
闘魂三銃士はまだ出てこない。
ハンセンもピークは過ぎていたし全日だった。
帝王はまだ若手の1人。
あの頃ベイダーの強さだけが目立っていた。
まともに相手ができるレスラーはいなかった。
唯一体格的に互角だったのは北尾。でも北尾は北尾なのでお話にならず。
そうベイダーも前田、ジョージ、平田と同世代だ。
前田とジョージがいたらベイダーの好敵手になったんだろう。
この2人なら体格的に申しぶんない。
残念ながら前田もジョージもいない。
ベイダーも新日のミッシングリンクの犠牲になった。
不幸なことに天龍とはスレ違い。
天龍となら凄い試合になったんだろう。
ベイダー対天龍 見たかった。
ベイダーを見ていると全日本に行っても高田のところに行っても
弟子に稽古をつけているようにしか見えなかった。
強すぎてその当時まともに正面から組めるレスラーはいなかった。
日本人レスラーはみんな小さくてベイダーのパワーにタジタジだった。
だからベイダーのベストバウトがあのドームでのハンセン戦なんだろう。
あの当時ハンセン以外ベイダーを正面から受け止めて押し返すことのできるレスラーなんていない。
リミッターを外して試合ができたんだと思う。
思い切り殴ってもハンセンなら壊れない。
かつてハンセンも強すぎて正面から誰も受けてもらえなかった。
そこにアンドレが正面から受けてくれたおかげで伝説の田コロとして語り継がれた。
立場をかえてハンセンがベイダーの攻めを受けた。
そしてあのドームの一戦も伝説になった。
あのとき見ていた僕の二階席までその迫力が届いた。
六万人超の観客が揺れた。
猪木のダーにイチニサンという枕詞が初めてついた。
この日から猪木はダーを言いにくるだけの記号になってしまったけど。
全日本参戦、北尾デビュー 話題はたくさんあった。
でも間違いなくあの日はみんなベイダーとハンセンに酔った。
そしてベイダーハンセンを超える超弩級のカードはこれ以降実現していない。