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極私的プロレス観戦論

大仁田と爆破マッチ

来月大仁田が引退する。

その大仁田の身辺が騒がしい。

カシン、藤田。

引退した後に川崎で爆破マッチを用意するくどめ。

 

大仁田の肉体的なレスラーとしては全日引退で終わっていると思う。

FMWを旗揚げしてからは、稀代のプロモーターだと思う。

到底プロレスとは言えない爆破マッチ。

なぜファンもレスラーもそこに惹かれたのだろう?

トップレスラーで徹頭徹尾批判したのは前田日明ぐらいか。

底抜け脱線ゲームとは言い得て妙だった。

 

天龍、長州、蝶野が大仁田のルールでリングに上がったことで爆破、有刺鉄線も立派なプロレスになった。

総合に押された時代背景もあったろう。それにしてもトップレスラーを

爆破のリングにあげる彼の手腕はもっと評価されてもいいのではないか。  

 

爆破マッチは、FMWのリングではリアルさを伴って見ることができた。

猪木上田の落ちないネールデスマッチ。

落ちないから観客の想像力をかきたてた。

 

その反対に爆破マッチはそこに突っ込んで痛さを音と硝煙と光で観客の五感に訴えた。

爆破マッチには、関節技の痛みよりわかりやすい痛みがあった。

どうせ突っ込まないだろという最初の目論見を大きく裏切り本当に爆破した。

形だけのデスマッチのフラストレーションを本当に爆破してくれた。

その後観客は何回爆破するかを期待して会場に行った。

爆破すれば起き上がれない。テリーもシンもハヤブサも天龍も爆破すればダウンした。

 

そんな爆破マッチのピークが長州と大仁田の一戦だ。

この試合で長州は爆破しても倒れずになんの変化もなく試合を続けた。

爆破しても平気? 長州はいつものスタイルにも関わらず。

(蝶野は上半身をコスチュームで覆っていた。)

大仁田が長州を爆破マッチに上げる条件で火薬の量を減らしたのかもしれない。

それとも長州に好きにやっていいと言ったのかもしれない。

いずれにせよ長州は有刺鉄線も爆破も全く意に介しなかった。

長州は爆破されても平気なことで大仁田を否定した。

このとき爆破マッチの命運はつき大仁田は本物の嘘つきになった。

長州をリングに上げる代わりに大仁田は爆破マッチのリアルさをすべて失った。

試合も長州の一方的展開だった。

この日を境に爆破マッチは本当の脱線ゲームになってしまった。

 

今行われている爆破マッチは体が動けなくなりレスリングで魅せることができないレスラーたちの隠れ蓑としてその命脈を保っている。